2024年11月21日木曜日

Pickering V15/DJ 未使用品

ピカリングのMM型カートリッジ、V15/DJの未使用品です。

V15DJは、ピカリングがフォノカートリッジの製造を打ち切る2008年まで販売されていたDJ向けの廉価な針でしたが、1965年から続いた同社の代表的なモデルであるV15シリーズという事もあって、今あらためて聴くと太く安定感のある音はもっと評価されて然るべきと感じます。また、モノラル盤再生についても長じています。


V15/DJは中古品が数多く出回っていて容易に入手可能な反面、使用頻度の高い個体を非常に多く見かける針で、本来の音で鳴る中古針は少いというのが私感です。スクラッチなどで酷使され*針先が尖ってしまった針の場合、低域の上に険のある中高域が乗る、いわゆるドンシャリ傾向で帯域全体のまとまりを欠いた荒っぽい鳴り方になります。また、ダンパーのヘタったものでは低域が膨らむ分だけバランスの破綻をより強く感じます。本品は点検済みの未使用品ですので、この針の本来の音をお楽しみいただけます。


2個パックですが、1個ずつのバラ売りといたします。元箱、説明書は付属しません。


V15/DJ・①


V15/DJ・②
シェルへの取り付けを一般的なボルト・ナットでされる方には不要な物ですが、純正の固定用ブラケットは1個分しか付属していないので、こちらには中古品を追加しておきます。


扱いやすく聴きやすい。古典的なスペックの針です。


本品はいずれも未使用のデッドストックですが、外観には長期保管に伴う汚れや擦れなどがあります(ピカリングの塗装はアルコールに負けるため、外観清掃は最低限に留めてあります)。また、販売に際し、点検のためそれぞれLP片面分ほど試聴しています。



・Pickering V15/DJ未使用品・・・・・各12,000円(税込み)*
*商品の性格上、発送での販売については初回取り引きのお客さまは現状販売に限り承ります。

2個まとめてご購入の場合は、元箱・説明書は添付いたしますが、取り付けブラケットは当初付属の1個分とさせていただきます。

2024年11月14日木曜日

音の嗜好と機器の相性

 ドイツ製スピーカーをお使いのお客さまから、ステレオアンプのご用命。

スピーカーは、当店にも在庫のある西独製のブックシェルフ型で聴かれており、アンプについてもすでに良いものをお使いだったのですが、入力が1系統のみという点と、ボリュームを開けた際にやや音がきつくなるという所から代替わりを検討されているとのこと。

「もっと厚みのある音で聴ければと思います」

「幸い同じスピーカーがうちにもありますから、在庫のアンプで相性の良いものを見繕って、良いものがあれば後ほどご案内しますね」

そんなやりとりをして電話を切ったものの、

「あのアンプできつい音が出るってのは一体・・・?」

お使いのアンプは小型の小出力アンプですが、音のよい製品です。ここの製品は何よりきつい音を嫌った音づくりを旨としているはずですが、なぜ?

しばらく考えて、思い当たりました。

このスピーカーはトランジスタアンプが一般的になって以降の製品です。採用されているドライバーも、小さな入力で大きな音を出すことを旨とした古典的な構造から、昔時の特質を残しつつも振動系の質量が増して耐入力値が上がり、低能率化の進んだ構造へと変わっています。こうした時期のドライバーにとって〜1Wクラスのアンプは、いくら上質な音づくりの製品であってもさすがに駆動力が足りないのでは?

ここまでが頭の中でのシミュレーションで、あとは実地に色々な組み合わせで鳴らしてみてどうか。結局のところこれに尽きます。


2024年10月31日木曜日

営業時間変更のお知らせ

 誠に勝手ながら、都合により11月1日(金)より当面の間、営業時間を10:00〜17:00へ変更いたします。あしからずご了承ください。

2024年10月19日土曜日

オースミ電機 業務用モノラルアンプ(当店カスタム品)

オースミ電機のモノラルアンプです。


本品は、店舗内BGM用途などに向けて販売されていた業務用のパワーアンプです。用途に応じた様々なタイプやOEMモデルが存在し、現在も後継の製品群が販売されています。

見たところは凡庸な業務用アンプですが、良質な国内メーカーのパーツで統一されたアンプ部や、古風なリニア電源、ベークライト基板や薄手の鉄板シャーシなど、必然的に良い音をつくる要素が揃っており、カバーを外して観ると素性の良さがうかがえます。

本品は20年ほど前のモデルで、国内で製造されていた時期の個体です。入力したステレオ音声をモノラル1チャンネルに合成して出力するという、ホームオーディオ目線で見るとマニアックな仕様となっています。


シンプルで古典的。広帯域・高S/Nを旨とする今のアンプとは異なる性格ですが、素直な音には飽きのこない普段使いの良さがあります。15Wという、感度の高い古典型から現代的な低感度ユニットまでスピーカーを選り好みせずに鳴らせる使い勝手の良い出力も魅力です。


今回はダークホース的なこのアンプの良さを最大限活かしつつ、更にもう一段上のモノラルサウンドを楽しめるよう要所に少しだけ手を加えてみました。

店頭でご試聴いただけます。


中古品のため、外観には使用に伴う傷があります。また、本品は完動品ですが、商品の性格上、現状販売にて。アフターフォローは有償にて承ります。


・オースミ電機 業務用モノラルアンプ(当店カスタム品)・・・・・12,000円(税込み)

2024年10月13日日曜日

コイル擦れの修理②

 次いで大きなユニット。

10インチ

これはコーン紙がカチカチ。叩けど響かず。ボイスコイルが完全に固着していました。

コーン紙もフレームから剥がせない紙質なので手の施しようがありません。先達に修理不能の旨を電話して梱包していると、ボコッ!と音がして沈み込んでいたコーン紙が戻りました。

再度電話。「こういう訳で、もう少し悪あがきしてみます」

コーンアッセンブリーを外せない以上コイルへは触れませんし、ボビンへのアプローチの方法も限定されます。ダンパーを剥がしてボビン周辺のちりを除去、様子を見ながらセンター調整していきます。

ポールピースとボビン内壁の隙間は8/100mmほど。ギャップ幅の狭いドイツのユニットの中でも特に狭いです。

3日掛けてどうにか触れない位置へ調整できたものの、鳴らしてみるとどうしても異音が取れません。中高域にコイル擦れとは異なる性格の異音が乗ります。音の感じから推測すると、コイルにボビンから剥離している箇所があるようです。

コイル抜けや剥離はコイルの上にニスを塗れば収まりますが、コーンアッセンブリーを外せないのでは処置ができません。

悪あがきの策は尽きました。残念ながら、やはりこのユニットは修理不能です。


直らない状態からの組み戻しは気が重い

2024年10月11日金曜日

コイル擦れ修理①

 同業の先達からスピーカーユニットの修理依頼。

まずはコイル擦れを起こしたシュルツのKSP-130K。

点検するとダンパーにうねりが。東独製のスピーカーユニット全般に多く見られる症状です。

ダンパーを剥がして貼り直し

音出し点検

コイルもボビンも擦れなくなって異音は消えて修理完了と思いきや、ひと晩経つとまた異音が発生。確認すると再びどこかが擦れています。

何度か調整を繰り返したものの、状況は変わらず。仕方ないのでコーンアッセンブリを降ろすことに。

外したコーンアッセンブリを見て「ああ、これはダメだ」

ダンパーに対してボビンが斜めに貼られています。

コイル擦れの痕が傾いたなりの位置についています

原因は判ったものの、ボビンを真っ直ぐに貼り直す事はできないので、傾いたなりにエッジとダンパーの張り具合を押し引きで按配して貼って調整するよりほかにありません。
おそらくは、製造時にもそのようにして調整されていたのでしょうが、経年で癖が戻ってしまったのだと思います。

この貼り方で調整しても後々ふたたびコイルが擦る可能性はありますし、そうなったら再度の修理はコーンアッセンブリーの強度的に厳しいと思います。ただ、調整しなければこのユニットは聴けるようにはなりません。

擦らない位置を探して組み付け。ダンパーの傾きをエッジの張りで矯正したので接着は難儀でしたが、無事に付きました。

ひと晩置いてから終日鳴らして様子見。裸ユニットをボリュームを開けた状態で一日中鳴らすのはなかなかの苦行。

無事にコイル擦れは解消。東側ユニットの音は素晴らしいですが、品質にはムラがあり個体差が大きいので、リメイクする際も修理する場合も、そのあたりを勘案してやる必要があります。


2024年8月26日月曜日

GOODMANS MAXIM

英・グッドマンのマキシムです。

1964年発売。ブックシェルフ型小型スピーカーの元祖と言われるモデルです。


小口径の低域ユニットを巨大な磁石で駆動する設計は極端なキャラクターの音を想像させますが、実際に聴かれるのはバランスのとれた秀逸な音です。(この画像は前回入荷時のもの)

本品は、高低両ユニット、エンクロージャー、クロスオーバーネットワークとおおよそ総ての箇所に不具合を抱えた状態で入荷しましたが、いずれも修理・整備しましたのでマキシム本来の生き生きとした音をお楽しみいただけます。

修理①

修理②

外観には重年の傷が数多く見受けられますが、オリジナルの質感を重視し、研磨や再塗装などは施さずに仕上げました。ときどき外観の天地両側と背面を水拭きしてやると木地が良い状態に保たれます(材の乾燥したエンクロージャーは良い音で鳴ると言われますが、過度な乾燥は木地の寿命を縮めます。無垢材に限らず合板にも適度な水分の疎通は必要です)。


使用例

類似の製品が他に思い当たらないほど独特でありながら、一日中聴いても何年も飽きないだろうと思える普遍性。聴いていてテンションがあがるほどパワフルな一方で、聴きながらウトウトしてしまうほどの余裕。小さな中に相反する要素を破綻なく併せ持ち強烈な魅力としている、唯一無二と言える音のスピーカーです。

モノラル一本。


・GOODMANS  MAXIM・・・・・売約済み

発売当初のマキシムの広告には、ステレオ時代への移行期を反映した“Buy one for yourself (or two-the Maxim is ideal for stereo)”の文言が見られます。
1台でモノラル再生した際に音が細らないのは、マキシムがあくまでも1台で聴くことを踏まえて作られているためです。