久しぶりにシュルツKSP-130Kの修理。
この個体は中高域に音割れが出ていたので、フレームからコーンアッセンブリーを外してボビンやギャップなど要所を清掃・調整して組み直した。
特徴的なスポンジエッジを採用したシュルツのKSP系ドライバーは、130も215もきわめて優秀なユニットだが、個体差が大きく、製造時期や生産単位ごとの造りの差に各部の経年変化や保管状況、使用環境といった要因も加わって昨今では不具合を生じる個体も出てきている。
ダンパーの芯出しをしたらエッジを張り、テスト信号を出音させながら微調整
この個体は前期のリアマウント仕様なので、エッジの外周にガスケットを貼る
分解時に剥がして痩せた厚みの分だけガスケットの下地紙を足す
最後にガスケットのフェルトを貼り戻して完成
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次の個体は前枠裏面にガスケットの張られたフロントマウント用の後期型
不具合は、音割れに加えて音が出たり出なかったりというもの。確認してみると、ボイスコイル引き出し線が切れて錦糸線の断面が端子に触れた状態だった。同様の不具合は過去にも見ている。
製造時期に関わらず、シュルツのドライバーには引き出し線である錦糸線をほとんどたわませずに端子へハンダ付けしている個体が見受けられる。線がピンと張った状態に近いほど、再生時のコーン紙の振動による疲労は硬く柔軟性の無いハンダ付け部付近に蓄積する。シュルツは柔軟なダンパーと柔らかいスポンジエッジによって高い自由度でコーンを振幅させる構造なので、錦糸線が切れるのも道理と言える。
切れた時点で錦糸線には長さの余裕が全く無いので、端子側から線を伸ばして端子寄りの中間点で接ぐ。錦糸線はたわませ加減にする。
無事に導通がとれた。あとは実際に音出ししながら良否を確認していく。
こうした修理や調整はユニットの音質の根本に関わる部分へ手を入れるものなので、今の自分に出来るのはモノラル一本ごとの修理だけ。ステレオペアとなるともう手が出せない。左右のドライバーの音を揃えるノウハウを持っていないためだ。
抜きん出た実力を活かすために使いこなしの求められるシュルツは、時として音楽を置き去りにした“オーディオ道”みたいな方向へ持ち主を引っ張っていく危険性もあわせもっているので、そういう意味では少しばかり厄介な存在とも言えるし、また、修理する側から見れば、かなりの厄介者と言える。