シュアー純正交換針の個体差については以前「35シリーズの針」で書いたが、音の違いは製造品質のばらつきのみに由来しているわけではなく、仕様の違いにも因っている。
たとえばM44系のカンチレバーは、80年代末頃からそれまでの円い断面のパイプから扁平な仕様へと代わっている。
また、針の径も時代によって違いがある。
SC35C(交換針:SS35C)は、1970年代は針径0.6ミルで再生帯域20~20,000Hzを公称していたものが、 90年代後半には0.65ミルへと代わっており、
最終ロットに近い2016年製では0.7ミルで20~17,000Hzとなっている。
44シリーズを見てみると、M44Gは2016年製ではよく知られた0.7ミル円錐針だが、
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80年代末のものには0.6ミルの針が採用されている。
こうした仕様による違いに組み立て品質のばらつきや天然ダイヤ製チップに由来する音質差が重なって、シュアーの針の個体差は生まれる。
ただ、コンディションの真っ当なものに限り、あくまで自身の嗜好に基いて思い返してみると、自分はこれまで“もともと音の良くないハズレ”の純正針というもの出くわしたことは、憶えているうちでは一度か二度くらいしか無い。
人と同じで、ごく稀にどうしようもないワルの出ることはあっても、おおむね「みんなちがって、みんないい」なので、好事家の方々にあってはそうした中から各々に合った音の一本を探し出すことが肝要と言える。





