SC35Cの針と一緒に同じ35シリーズの交換針のデッドストックが何種かまとまって入荷した。
35シリーズや44シリーズなど、シュアーではシリーズ内の針の互換性を保証しているので、これらの針は、たとえば35シリーズであれば最古参のSC35Cを後発の針と組み合わせることで軽い針圧へ変更したり、より高出力・広帯域の音にアップグレードしたりとそれぞれの特性を活かしたカスタマイズができる。
今回入荷した針は最終ロット付近のごく新しいもの。シュアーがアナログ針の生産を終えてから7年あまり経つので、念のため販売前にはSC35Cに付けて一つひとつ試聴している。今まで不良品はひとつも無いが、個体差の大きさには閉口している。
シュアーの針には個体差がある。その事は以前から知っていたし、どんなものか充分解ったつもりでいたが、今回同じ型の針をいくつも聴いた事で、その認識が甘かったと痛感した。自分が思っていた以上に個体差は大きかった。
近年のメキシコ製に限った事ではないが、シュアーの針は見た目からして針の仕立てに一個一個バラつきがある。カンチレバーの付き方からダイヤチップの植わり方、製造時期が異なるとカンチレバーそのものの形状も違うし、SC35CとM44Gに至っては製造時期によって針径さえも異なっている。建前である製品仕様からして揺れがあるのだ。アナログの世界のこと、形が違うものの音が同じ訳はない。
そして、今さらながら気付いたのが、ダイヤチップの仕様だ。
説明書に“All Shure styli feature a polished, natural diamond tip”とある。シュアーは近年の工業用ダイヤモンドでは一般的でなくなった天然ダイヤを針先に採用していたのだ。
スタイラスチップが人工ダイヤでないと知って、個体差のことがストンと腑に落ちた。
これが針の製造を終えるまで貫かれたシュアーのこだわりだとしたら、針の個体差も良し悪しではなく個性であり、それも含めてシュアーの音なのだと好意的に理解すべきかも知れないし、そう捉えるしかないかも知れない。
ただ、そんな風に弁護してはみたものの、同じ型の針でもスパッとした音色の個体と角の取れた穏やかな出音の個体が入り交じっている。「こういう音です」とひと言で云えないほどキャラクターに振れ幅があるのは困ったものだ。


