2025年1月14日火曜日

突板シュアーの再製作

数年前に作った突板仕上げのシュアーを、素材や工程を一新した第2版として再製作した。

このカスタマイズは、Vintage JoinのオリジナルMMカートリッジを真似て作ったものが元となっている。自製のニセモノをノーマルの針と聴き比べて、カートリッジに木を組み合わせることで音の階調が変化するという実感を得、それなら自分はメインで使っているシュアーを突板で仕立ててみようと思い立ったのだった。


初版・M44-7

初版第2刷・M75B

初版・SC35C

当時、試行する中で分かったのは、響きの向上と響きの減衰がトレードオフの関係にあるということ。手を加える事で響きの質が高められる一方、響きの量は目減りしていく。考えてみれば物理的にごく当たり前の事だが、響きをコントロールしようとする中で質と量の違いについては混同してしまいがちだった。おかげで見た目はそれらしく音のひどいシロモノを幾つもこしらえる羽目になった。

針がレコードの盤面を引っ掻いて音を取り込む過程で、いわゆる「針鳴き」として散っていく響きをカートリッジ本体部で受け止め再生音に活かす。それに好適な素材は木である。・・・このコンセプトについては当初から変わらないが、先に書いた響きの相関関係が、カートリッジのような小さなものではことさらシビアに現れると分かってからは、いかに響きを目減りさせずに仕立てるかが主課題となった。
実際のところ答えはある程度まで出ていたが、それを形にするには工程が煩雑過ぎた。既にそれなりに納得のいく音で初版を仕上げられていた事も手を止めさせた。

ところが先般、微弱な振動を相手にした時には、普段は意識しないようなごく些細な事が音に大きく影響したり、常識的にこうと思っていることがまったく逆に作用する場合があるという事を痛感する出来事に遭遇して、「それなら、やっぱり針にもまだかなりの伸び代が・・・」と思い直し、3年ぶりに第2版を作ることにした。


改訂版の製作にあたっては、これまで作業性の面から妥協していた部分をすべて理想的と思える方法で通した。

結果的に第2版は、見た目こそ初版と変わらないものの、音はまったくの別ものに仕上がった。当初は残しておくつもりだった初版は、聴き比べてみて即座に解体した。



仮称・M44G-SV(=Sliced Veneer)

























仮称・M44-7SV

























M44G、M44-7ユーザーには特に聴いていただきたい。


追記: このカスタマイズは可逆性の改変であり、いずれのカートリッジもオリジナル状態へ復帰可能となっている。