2021年6月21日月曜日

4A-28の修理のつづき

 先月末に修理のため分解した花柄ダンパーの4A-28の作業を再開。

コイル擦れ(というよりも固着)は、ギャップ部への汚れの付着とボビンの歪み、ポールピースの偏芯が原因でした。

アルミ製のボイスコイルボビンは、溶剤で汚れを拭き取ってから歪みを整形。ギャップ部の鉄粉を除去してからポールピースの芯出し。さほどギャップの狭くない造りだったおかげで目視で芯出しできました。

それにしてもすごい造りです。

コーンを固定している鉄板は一枚ずつ手作業で切ったり曲げたりした物にネジ孔を穿って作られています。ねじ孔の位置はバラバラでそれぞれに互換性は無く、したがって完全に元の場所に組み込まないと組み戻せません。留めるボルトもナットも、普通の鉄と黒く焼き入れしてあるもの、灰色に塗られたものや真鍮のものが入り交じり、太さも長さもまちまち。頭もナベやトラス、平とまるでバラバラです。

およそ工業製品とは思えない造りですが、これは紛れもなくソ連の量産品です。昔日の東側の製品を今の私達の常識に照らして見る事の方が間違っているということでしょう。


品質よりも先に高品質を当たり前だと思っている私達の思考を矯正すべきなのだ。

壊れたのでは無い。はじめから使えなかったのだ。

壊れているのであれば直せば良い。そうすれば使える。運が良ければ。

修理しても鳴らない時には自分で歌えば気が晴れる。


思考をかつての東側的なモードに切り換えて対応すれば何とかなるでしょう。


無事に直りました。

アルニコ/ベークライトフレームの4A-28とは音のキャラクターが違います。明らかに広帯域で現代的。この造りのユニットから出る音とは思えません。

ただ、これは少し反則だと思います。改心した不良の善行が一段と功徳であるように見られたり、周りに店が無くて仕方なく入った汚い店の料理が予想外に旨かった時にことさら美味に感じられるのと同じだからです。


ソ連製ユニットの基本的な性能はおしなべて非常な高水準にあったようです。ただし、製造環境において適切に造られ、然るべき環境下で運用・保管されていたものでないと、その本来の性能に接する事は難しいという事でしょう。