2025年11月29日土曜日

AT10Gを組む


入荷品と一緒に入ってきたオーディオテクニカのAT10Gを仕立てた。

この針はVM型カートリッジのエントリークラスの製品として長く売られていたモデルだが、とにかく愛されない不憫な存在で、大方のオーディオ愛好家からは見向きもされない。音は悪くないので、見た目の素っ気なさが不人気の主たる要因だろうと個人的には思っている。デザインにもカラーリングにもおよそ質感と呼べるような色気はそなわっていないから、愛着や所有欲はどこにも引っ掛からずに滑り落ちて行くのだろう。

AT10Gにはデザインとは別に文句をつけたいところがある。販売時に組み合わされている純正シェルがこの針の性格と合っていない点だ。
アルミダイキャスト製の純正シェルは高品質ではあるけれど、AT10Gの振動系には重過ぎて純正の仕様で鳴らしていると盤によってはアームが大きく揺さぶられて音揺れしてしまうのだ。この針にはもう少し軽いシェルが相応しいと思う。

不人気で伸びしろもあるという事で、純正仕様にこだわらず当店風に仕立てる事にした。思い返してみるとこの針が入って来る度にこんな風にいじっている。


純正シェルを外して汎用のプレスシェルに組み換え。ダンパーがいなした力を拾わずに受け流してくれて、かつ音が細らない丁度良いものを。
リード線は最近入荷したエナメル線で製作した。この線はこのところのめっけものだ。1920年代の米国製品としか判らないメーカー不詳の線ながら非常に良質で、シェルリードに用いると、生真面目なキャラクターの針を好い按配に踏ん張りの利いた腰のある音へとしつけ直してくれる。


仮組みで試聴してから、更にもうひと手間チューニングを施して完成。
無事狙った音にまとまった。

それにしてもつくづく味も素っ気もない佇まいだ。せめて針のグリップ部の色だけでも違っていたら・・・と思うけれど、では何色だったらましに見えるのかと問われたとしても、すぐにはちょっと思いつかない。