売り物にならないシュアーSC35Cを分解して造りを観察してみた。
面白いことに本体格納部と外殻の接着箇所は前後に分かれており、組み合わせた状態では両者の間に空洞ができる。これが音づくりとしての意図的な設計か否かは判らないが、この構造だと天面をベタ一面で接着しているM44系と比べて針鳴きが大きく出そうだ。
本来、針鳴きは排除すべき不要振動にあたるが、当店では活かすべき響きと捉えているので、この構造を利用してSC35Cをチューニングしてみることにした。
今回は試行の1回目でこれはという音が出た。
響きの階調が増して、音場の背後に埋もれていた細やかな響きがほぐれて聴こえる。音場表現自体も広くなった印象で、全体的によりいっそう伸びやかな鳴り方へと変わった。
佇まいや製品の仕様から粗い音の安物針というイメージを持たれている感さえあるSC35Cだけれど、実際にはバランスのとれた素直な音と高い耐久性を兼ね備えたモデルであり、古典的なカートリッジの特質を色濃く残した稀有な存在でもある。そうしたSC35Cならではの良さをより良い形で引き出せたと思う。
SC35Cの難点を挙げるとすれば、本体と交換針の相性の良し悪しが大きい事だろうか。交換針がブカブカで固定できないというケースが多い。
これについては構造さえ分かっていれば、あとは工具と手先の使い様でいくらでも調整が利くので、好事家からは一顧だにされない一方で、ある意味、針の方でも使い手を選ぶという事が言えるかも知れない。この辺りがいかにも業務用途向けのモデルらしい。

