2024年7月27日土曜日

GOODMANS MAXIMの修理

 久々にグッドマンのマキシムが。今回もモノラル1本での入荷です。

英グッドマンのマキシムは、ブックシェルフ型スピーカーの始祖と言われるモデルです。8cmに満たない小口径の低域ユニットを巨大な磁石で駆動させる力技の機構は一見するとバランスを逸した極端な性格の音を想像させますが、実際の音は闊達で量感に富む素晴らしいものです。一方で、年代の古さと造りの面からコンディションに難のある個体が非常に多く、高額な流通価格と相まって仕入れには難儀するスピーカーでもあります。

今回の個体も動作確認してみたところ、高域側のユニットがまったく鳴っていませんでした。

開けてみると、ネットワーク部のコンデンサが駄目になっていました。

ひび割れた高域用のコンデンサ(2μF×2)。画像を撮った後で固定テープを剥ぐと、砕けてバラバラになってしまいました。

交換するパーツは、同じものが無ければ同国製のもので性格や年代の近いものに、それも無ければ国産の汎用品へ替えます。パーツの用い方は修理者によって様々なやり方やポリシーがあると思いますが、当店の場合は高級なオーディオ専用コンデンサなどは避け、なるべく平凡なものを使うようにしています。高音質を謳う高級パーツにはそれ自体が強い個性を持っている事も少くないためです。

ネットワーク部のコンデンサについては同じオイルコンデンサが入手できなかったため、国産の電解コンデンサへ換装しました。オーディオ専用のフィルムコンデンサよりも、一般的な電解コンデンサで銅足の良質なものの方が好適と判断したためです。

コンデンサ交換後、仮組みで鳴らしてみますが、相変わらず高域ドライバーは鳴りません。SP端子でチェックした際は高域ユニットからチリチリ音が聴こえたのにと思ってユニット単体で再度チェックしてみると、導通無し。どうやら低域ユニットからのノイズを高域側の音と勘違いしていたようです。

コイルの断線となるとどうしようも無いなと諦めかけたものの、「端子付近での断線なら、つなぎ直せばあるいは・・・」と思い直し、高域ユニットの修理を試みることに。


内部の端子部を見ると、

引出し線はどちらもしっかりと端子に付いていました。つまり、コイルはボイスコイルボビン側のどこかで切れている事になります。

ポールピースが錆びてボビンと擦れている状態なので、腐蝕による断線かも知れません。いずれにしても望みは絶たれたと諦めて、後学のために分解して内部の造りを観てみることにしました。
フレームは黒いプラスチック製で磁石や端子と一体成形されています。
振動系は、一般的なフルレンジドライバと同じギャザーダンパーでストロークする構造。振動板とダンパーの間には吸音材が詰めてあり、エッジは伸縮性の無いビニール製。

ダンパーを剥がしてコイルを見てみると、思いのほか綺麗な状態。しばらく見ていると、断線箇所が見つかりました。同時に「直せるかも」と再び希望が。

ボビンからボイスコイルを1周分だけほぐして引き直し線を抜き、その孔にほぐしたコイルを通して新たな引出し線に。コイル全体にニスを掛けてほぐれないように固めたら、ポールピースの錆びを取って、ギャップ溝を綺麗にさらい、芯出ししつつ組み直し。

仮組みで鳴らしてみると、無事に出音しました。


一時は部品取りにするしかないかと思いましたが、どうにか復活。ただ、まだ低域ユニットや箱の修理が残っているので、気は抜けませんが。