このところ、店で使っているM44-7の音が気になってきていました。盤によってはどうも今ひとつ。特に歪みの出やすい内周部になると中高域に難を感じます。
そういえばもうだいぶ使っているなと思って辿ってみると、使い始めは昨年の3月の終わり頃。もうすぐ丸一年なのでした。
この針は、音の基準と試聴用を兼ねてほぼ毎日使ってきたものです。一日の大半を音楽を鳴らしている店内で、CDを鳴らしていた時間や他の針を使っていた時間を差し引いて極力少く見積もっても、日に2時間、週10時間、月40時間、年480時間は使った勘定になるでしょう。多くのメーカーが針先の寿命の目安としている150〜200時間はとっくに過ぎている事になります。
レコード針の寿命については好事家や識者の間でも様々に言われており、針先の摩耗についても、“使い込んで針先が磨耗すると鋭く尖る” “丸針であれば、適切に使用すれば針先は半永久的に減らない” など諸説聞きますが、新品から音に不具合を感じるようになるまで使ったこの針の針先は、実際のところどんな風になっているのでしょうか?
針先を撮ってみました。
見たところは目立ってここがこう擦り減ったんだなと思われるような点は無いようです。
では、新しい針はどうでしょうか?
今度は同じ針で箱から出したばかりの新品を撮ってみました。
針先の磨耗に起因したものかダンパーはじめその他の部分によるものか、明確には判りませんでしたが、今回のこれは、一見問題ないように見えても使用にともなって針には寿命が来るという事を実感した出来事でした。
不朽の名品から廉価な普及モデルまで。中古市場に出回っている無数の針は、それぞれあとどれくらい寿命を残しているものなのでしょうか?その製品本来の音が出るものは今日どれだけ生き残っているのでしょうか?