2024年3月2日土曜日

レコード針の寿命

このところ、店で常用しているM44-7の音が気になってきていました。盤によってはどうも今ひとつ。特に歪みの出やすい内周部になると高域に難を感じます。

そういえばもうだいぶ使っているなと思って辿ってみると、使い始めは昨年の3月の終わり頃。もうすぐ丸一年なのでした。

この針は、音の基準と試聴用を兼ねてほぼ毎日使ってきた中電・N-44HWです。一日の大半を音楽を鳴らしている店内で、CDを鳴らしていた時間や他の針を使っていた時間、作業に集中して音楽を止めていた時間を差し引いて極力少く見積もっても、日に2時間、週10時間、月40時間、年480時間は使った勘定になるでしょう。多くのメーカーが針先の寿命の目安としている150〜200時間はとっくに過ぎている事になります。

レコード針の寿命については好事家や識者の間でも様々に言われており、針先の摩耗についても、“使い込んで針先が磨耗すると鋭く尖る”  “丸針であれば、適切に使用すれば針先は半永久的に減らない” など諸説見聞きしますが、使い始めの良い音から変わらぬ使用環境で音に不具合を感じるようになるまで使ったこの針の針先は、実際のところどんな風になっているのでしょうか?

針先を撮ってみました。



見たところは目立ってここがこう擦り減ったんだなと思われるような点は無いようです。

では、新品の針との違いはどうでしょうか?

今度は箱から出したばかりの新品の針を撮ってみました。




パッと見た感じでは同じようですが・・・

針先を更に拡大して比較してみましょう。



使い古しの方がごく僅かに先端が鋭いように見えますが、この程度の差異を以って“針先は磨耗すると鋭く尖る”という事を説明するにはやや説得力が足りないようにも思います。

では、肝心の音はどうでしょうか?

新品の針へ交換して試聴。

これで音が今ひとつのままだったら大ごとですが、無事に真っ当な音が出ました。やはり古い方の針は寿命を迎えていたのでした。

針先の磨耗に起因したものかダンパーはじめその他の部分によるものか、明確には判りませんでしたが、今回のこれは、一見問題ないように見えても使用にともなって針には寿命が来るという事を実感した出来事でした。


不朽の名品から廉価な普及モデルまで。中古市場に出回っている無数の針は、それぞれあとどれくらい寿命を残しているものなのでしょうか?その製品本来の音が出るものは今日どれだけ生き残っているのでしょうか?


*再検証