コイル擦れのジェンセンの12インチユニットを修理しています。
古典的な固定エッジのユニット
構造やコーン紙の材質といった要因から、この時代の米国製ユニットの分解修理は非常に困難です。フレームからコーンアッセンブリーを分離させられるか否かはコーン紙の性質と状態に左右されますが、古いジェンセンのコーン紙は劣化が進むと割れるように破れるため、当店では修理は「無理です」と言うようにしています。
今回の修理も、無事に直る事は稀で、直せたとしても見た目がツギハギだらけの酷いものになると説明して一旦は断りましたが、たってのご要望という事で引き受けました。
ツギハギになるとは言ったものの、修理するなら可能な限りオリジナルに近い状態できれいに直すに越した事はないので、工具や作業法を工夫して無事にコーンアッセンブリーを取り外すことが出来ました。
古いものを修理していると、ふとした偶然から良い作業法を思い付いたり、まったく違う用途の道具や素材が思い掛けず役立つといった事がありますが、今回もそういう幸運に助けられた形です。
今回の個体はボイスコイルのボビン部だけでなくコイルそのものもだいぶ擦れています。ヨーク側の錆びをコイルがもらってそこから擦れ始めたようで、エナメルが剥げて素線の銅が一部露出しています。互いに接触してしまうとコイルでなくなってしまうのでニスを塗って絶縁しておきます。
ポールピースにも偏芯があります。古いユニットには多く見られる症状です。もともとの組立て品質が原因のこともあれば、経年で出た歪みによる場合もあります。ギャップ幅が一定でないこともコイル擦れの要因でしょう。
さて、無事に直せるか?