試作中のモノラルミニアンプの音に今ひとつ納得出来なかったので、同業で先達のヴィンテージ・ジョインに相談してみたところ、
「良い感じにアレンジしてみるから送ってよ」
と店主のキヨトさん(一発変換しないので、以下雑誌執筆時のペンネームであるカタカナ表記とします)。
代々木に送り、待つこと1週間。
「出来たよ。試聴しながらで何度かやり直してるから、ハンダの手直しなんかは良い感じにしてね」
着いた物を観ると、ほぼ元々の回路のものが万能基板に組み直してあります。
「あれ?回路自体はまるで変わってない」
聴いてみると、
「・・・なんだこれ、どうしてこういう音が出るんだろう」
耳障りな高域のクセが綺麗に消えて、こういう音にと思っていた通りの音がすんなり出てきます。しかも音全体が太くグッと出て来る印象。別ものです。
不思議に思いキヨトさんに訊いてみると、
「そういうシンプルな回路は、プリント基板じゃなくて手配線で組んで鳴らしてやった方が良い音で鳴るんだよね」と。
「でも、プリント基板の方が配線経路が最適化されていて良いんじゃないですか?」
「電気的にはたしかにそうかも知れないけど、理屈と音の良し悪しが一致するとは一概には言えないんだよね。今回の場合はっていうと・・・聴いてみてどう?」
「断然こっちが良いです」
「でしょう(笑)?プリント基板に組み付けるよりもはるかに手間はかかるけど、音にはそれだけの違いとして出るんだから、そこはきちんと手で組まなきゃね。あとは、高級なパーツが良いとか稀少な素材だから音が良いとかいう事でなく、単純に音の良し悪しというところに立って選んだパーツを使って、余計な事をせず出来るだけシンプルに組んでやるって事も大事だね」